『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活 (講談社現代新書)』

書店で新刊コーナーにあったので読んでみました。

ルポとしては面白いですが、

マクロ経済の観点からすると、著者の認識は勉強不足の点がいくつかありました。

 

最初に断っておきますが、ルポの部分はよく取材されています。

 

アベノミクスに対する認識

 アベノミクスで平均賃金が下がったことを問題視していますが、

 平均賃金が下がることはGDPが増えていれば問題ありません。

 

 以前のブログでも書きましたが、

 年収1000万円の人が1人で働いていたところ、会社の状況が良くなってきたので年収

 300万円の新卒を雇うことにしました。平均賃金は650万円になりますが、これって

 問題ありますか?平均は下がりますが、新しく人を採用しているので、雇用は上向い

 ています。必要なのは平均値ではなく、合計値。その合計値が上がっているかどうか

 で経済状況の良し悪しをジャッジします。

 

②財政についての認識

 財政破綻すると書いてありますが、財政破綻はしません。高橋洋一氏をはじめとする

 論客が語りつくしている通りです。

 

③労働者と経済の関係についての認識

 著者は「労働者の質の低下や余裕のなさ」は経済全体に悪影響を与えるのではない」 

 か、という問題意識を持っていますが、因果関係が逆です。

 経済全体が傾く(つまりは景気悪化)から、労働者にしわ寄せがきます。

 システムが綻びが生じるから、その中で生きるミクロに負担がかかるのです。

 

 労働者が経済全体に影響を及ぼすことはまずありません。

 

ルポとしては面白いので、ある程度売れるかと思います。

なので、読む際にはある程度マクロ経済を勉強しておくことを推奨します。