『奇跡の社会科学(中野剛志著)』(PHP新書)

普段はこの人の書籍は読まないのですが、

社会科学の古典のダイジェストとして、読んでみました。

 

正直、この人の認識には賛同しかねる箇所は何カ所かありますが、

この人自身、古典をきちんと読んでいて、

自分の都合のいい解釈はせず、書いてあることを正確に読み込んでいると感じます。

 

そのため、古典のダイジェストとしては便利です。

 

マックスウェーバーの官僚制についての認識は、現在にも通底します。

 

官僚制は効率や合理性を重んじます。

例えば10万円給付。

日本の全国民に一斉に同じオペレーションをかけられたがいい例です。

 

にも関わらず、

「官僚的な発想」というと、

 ・前例にとらわれていて新しいことをしない

 ・融通が利かない

などの否定的なイメージを持つことが多いのはなぜか。

 

そこで出てくるのがマートンの「逆機能」。

 

「手段であるはずのオペレーションが目的化するから融通が利かなくなる」

というものです。

 

日々の日常で感じていることを

100年前に理論化して世に問うているところを見ると、

古典の名著の中には現代にも通ずるものがあると認識します。

(もちろん間違っていることもありますが)

 

古典をダイジェストした新書はいくつも存在しますが、

正確な理解をしている著者として、私はこの人を挙げます。