英語は細かい文法を覚えなくても伝わればいい。
とにかく話すことが大切だ。
このような言説を耳にしたことがある人は多いかと思います。
この書籍、この言説に異を唱えるとまでは言わなくても、
そのことに対して疑問符をつけています。
ただし、だからといって、昔の文法中心の訳読法への回帰でもありません。
ものを伝えるとき、「文法よりも~」というくだりを聞くことはあっても、
「単語や熟語を覚えなくても伝える意思が大切」という言説を耳にすることはありませ
ん。皆、単語や熟語のように覚えないといけないことがあるという点では認識を一致さ
せているからです。
にも関わらず、なぜ文法に対してアレルギーがあるのか。
この著者は認知言語学専門の方です。
認知言語学とは、
「意味を表すのは単語や熟語だけではなく、文法もまた、意味を表す」という立場を
取る言語学です。
その言語を話している人が世界をどのように捉えているか、つまりはその言語の文法
体系が世界をどのように捉えているか。その意味で、文法はたんなる規則の集大成
であるルールだけに留まるものではない。
訳読法と現在の文法軽視の両極端の間には、両者とも文法に対する認識が足りないので
はないか。
それがこの著者の主張です。
実際その通りです。文法が整っていないと片言に聞こえることでしょう。
単なるルールや規則だけではない、その言語の生活圏の人々のリアルな姿を
捉えるためにも、上記のような認識を持って文法に取り組みたいものです。
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