英語の学習相談で、
「単語や熟語、さらには文法を覚えたのに英文が読めない」
という相談を受けることがあります。
突然ですが、
以下の2文のうち、半年で学力が伸びる可能性が高いのはどちらでしょう?
(以下の2文は、それぞれ違う生徒に書いてもらったものです)
① Flowers seem to beautiful, no matter what color or style is good in spite of smells are
good or bad.
② Every flours which have good colors and shapes look beautiful weather it smell good or
bad.
ちなみに、日本文は、
「花は色彩の良いものであれば、においの良しあしに関わらず、美しく見える」
です。
どちらの解答も間違っています。特に②の答案は、「花(flower)」や「であろうとなかろ
うと(whether)」の綴りが違いますし、smellに三人称単数の s が付いていなかったり
と、不注意な点が散見されます。大学受験の解答としては、点数はもらえないでしょ
う。
けれども、②の方が、①の解答よりも筋はいいのです。
①はスペルや三人称単数などのミスはないですが、構造が英語の体をなしていないの
で、こちらも0点です。
この2つの解答を分析する時、あえて私は、「文法」ではなく「構文」という用語を使
います。文法には構造に関する知識と、日本語と一問一答で対応させて覚えれば訳せる
ものとがありますが、ここでは構造に関わるもののみにフォーカスし、「構文」という
用語を使います。その方が、英語の本質を突けるからです。
英語では日本語でいう助詞がありません。
「私は映画を見た」という文章を英訳する時、日本語の「を」は表面には出てきませ
ん。動詞の後ろに置くと目的語としての働きになり、目的語で置かれている単語は
「を」を付けて訳す。このように、単語の置く順番で、日本語の助詞に当たる機能を代
用します。一定レベル以上の英語を身に付けようとするとき、この「表面では見えな
い箇所が見えているか」が非常に大きいのです。
先ほどの解答では、②の生徒の方が、目に見えない部分をしっかりと押さえています。
①の生徒は。前置詞の後ろに文章を続けるなど、構造に関する素養から叩き込まないとなりません。
なので、②の生徒には、残りの日数でできる限りの単元を扱って、
少しでも多くの正しい文を覚えてもらって入試を向かえる。
(覚えたところが出なかった時にはあきらめるしかないですが)
また、もう一つ、例文を使って考えてみます。
Whoever comes first can get the prize.
訳は「最初に来た人なら誰でも、その賞をもらえる」です。
よく巷では、
whoeverは「~する人なら誰でも」と「たとえ誰が~しようとも」の意味があり、
前者は名詞節として、後者は副詞節として機能する
という説明がなされるかと思います。
けれども、本当に英語ができる人は、意識的にせよ無意識的にせよ、
この文の中の目に見えないものが見えているのです。
この文章の主語は「whoever comes first (最初に来た人なら誰でも)」ですが、
主語なのに「が」や「は」とは訳していません。しかしこの固まりは立派な主語です。
その意味では、
「Whoever comes first can get the prize」も「He can get the prize」も、
全く同じ次元の例文です。
日本語では「が」や「は」が表に出てきていないし、意味も全然違うけれど、
Whoever comes first と He が同じ景色に見えるかどうか。
単語・熟語・文法を覚えてもなお、英文がなかなかスッキリ読めないという人は、
日本語訳につられて、「訳は全く違うし、長さも全然違うもの」であると、違う景色と
して見ているのではないか。
ある一定のレベルを超えた英語を身に付けたければ、
目には見えないこの抽象的な次元で英文を見る。
そのことが大切なのではないか。そう感じています。