『外国語上達法』(千野栄一)

著者は東京外国語大学の名誉教授となった言語学者なのですが、

それにも関わらず、語学が苦手だと語り始めます。

大学受験や会社で映画が必要なので再勉強している人にも、

有益なことが書いてあると思います。

 

①「忘れることを恐れない」&「目標と目的」

  外国語学習といえば文法と単語の習得。受験生時代を思い出します。

  語彙は途方もない量ですが具体的な目的と目標を定めておくと、

  それに合った語彙の目安量を本書が教えてくれます。

  (旅行なら旅行に必要な語彙の種類やその量。金融危機なら金融危機)

 *この著者、「教養のための語学なら、勉強するだけ時間の無駄」とはっきりしてい

   ます。教養のためにかじっても使う場面はないし、本気で語学を習得するなら、

   それはもはや教養とは言わない。

   この姿勢、今の英語教育の風潮に対して声高に叫びたい。

②「学習書と辞書」

  最初の段階の教科書や参考書は、薄くなければならない。

  語学書が理論的にどのように完璧にできていても、面白くなければ終わりである。

  →その通りです。本人のレベルにあっていなければ学習効率は落ちますし、

   士気を保つのも難しいです。

③「レアリア」

  これが語学学習で一番大事と筆者は強調します。

  レアリアとは、その言語を母語とする人なら当然に身に付けている知識や常識のこ

  と。以下は私個人の見解ですが(この書籍に書いてあることではありませんが)、

  機械翻訳で網羅できない決定的な事柄はこれかなと。当然に身に付けている知識や

  常識とは、文化的な感覚と換言してもいいかもしれません。こればかりは機械には

  取って代わられないよね・・・。

 

本書は古典ですので、語学書や参考書の類ではありません。

が、よく売られている「〇〇をやれば英語ができるようなる」的な安易な学習法でもあ

りません。古典として残るくらい、学術的な説得力のある学習法です。

(もちろん、この中に書かれていることが万人に当てはまるかは話は別です)